今回は、島崎さん(仮名)からの悩みです。
島崎さん 32歳/PM歴5年/システム開発会社のチーム・リーダー
私は、システムメンテナンスのプロジェクト・リーダーです。私の業務は継続的で切れ目がなく、プロジェクトマネジメントでいう「終結」の機会がありません。
また、「終結」を実施して教訓を残したとしても、業務に固有の内容になり、将来どのように役立つかがわかりません。
せっかく習得したプロジェクトマネジメントを活かすためにも、「終結」について具体的なアドバイスをお願いします。
回答
なるほど、プロジェクトマネジメントでは、成果物を納めたあとの「終結」が教訓を蓄積して組織の力を蓄える上で非常に重要だと説かれていますが、現実とは乖離しているように感じられるのですね。
まず、「終結」はプロジェクトがすべて終わったときにだけ行うものではありません。
すべて終わってから行おうとするなら、プロジェクトの初期の記憶はかなり曖昧になってしまうでしょう。
また、フェーズが変わる(プロジェクトが新しい段階に進む)と、関係者も入れ替わって、「終結」に必要な教訓が得られなくなります。
したがって、「終結」はプロジェクトの終わりだけでなく、フェーズの終了ごとに行うことが効果的です。
島崎さんの場合、フェーズがはっきりしないようなので、半年に一度というように期限を区切って、中間点ごとにその間の教訓をまとめるようにしたらいかがでしょうか。
また、現段階で将来の有用性を予測すること自体難しいですし、有用と思われるものだけを残すことも教訓としては不完全になりがちです。
例えば、私が以前コンピュータメーカーに勤めていたころ、システムのトラブルがあって、苦労して対応したのですが、のちになって、そのときの課題管理の手法が役に立ったことがあります。
そのシステムのトラブル自体は特殊な固有の内容でしたが、管理手法が後々社内で標準として用いられるようになりました。
「終結」の段階では、トラブルの内容に注目していたので、課題管理の手法の新しさには気が付いていなかったのです。
もし、このとき、有用と思われるものだけ残そうとしていたら、この手法が教訓として残されたかどうか疑問です。
終結の段階では、将来に対する評価はさておき、プロジェクト、あるいはフェーズを終えた段階で感じる「改善すべき点」と「有効だと感じた試み」を残します。
もし、終結の作業自体を負担に感じるのであれば、「単にレビューミーティングを実施してその議事録を残す」といった、スモールスタートでも有効です。
「終結は中間点も含めて、その時点の教訓を残すもの」と認識して取り組みましょう。