今回は、里田さん(仮名)からの悩みです。
里田さん 34歳/ITプロジェクトのプロジェクト・マネジャー
うちの会社では、ITのシステムを受注して開発したものを納品する仕事をしています。
自分たちでは上流工程を実施して、実際の開発作業はパートナー企業に委託しています。問題は、そのパートナー企業のC社です。
うちで扱ってるシステムは特殊なものが多く、技術的に経験のある特定の企業に頼りがちです。
C社もそのうちの1つなのですが、一つ大きな問題があります。
納期にルーズなのです。
最初のうちは、余裕を持っていたはずのスケジュールが、いつの間にか納期遅延必至の状態になるのです。
途中で、進捗報告を受けている範囲では、毎回「大丈夫です」という回答なのですが、最後になって納期に間に合わなくなってしまった…ということも度々です。
その都度、お客様に謝罪したり、納期遅延による後始末が大変です。
パートナー企業の進捗をしっかり管理するにはどうしたらいいのでしょうか。
回答
なるほど、ふつうなら納期遅延が多発している企業とはおつきあいをしないのも一つの方法ですが、特殊な技術ゆえに代わりがいないのですね。それはお困りでしょう。
お伺いした範囲で見えることは、委託作業自体が、不確実性をはらんでいて、不確実性とスケジュールの関係、状況がつかめていないことが原因のように思えます。
このようなケースでの解決策は、スケジュールと不確実性(リスク)の見える化と共有です。
まず、C社に対して、スケジュールとリスクの見える化を強く求めましょう。
そして、定期的に打ち合わせをし、それらのスケジュールとリスクを共有して、C社とともに対応していきます。
以下に手順を示します。
1.スケジュールの見える化
リスクがスケジュールにどう影響するかを明らかにする必要があります。
そのためには、リスクに伴う作業の遅れが、他の作業と納期にどう影響するかを見える化するスケジュール表現が必要です。
その際に、「ロジック・バー・チャート」というスケジュール作図ツールが便利です。
「ガント・チャート」あるいは「バー・チャート」と呼ばれる一般的な作図ツールでも、作業ごとの開始日と終了日、期間が示されていますが、「ロジック・バー・チャート」では、さらに作業ごとの関連を図示します。
ロジック・バー・チャートによって、先行作業が遅れるとどのくらい後続作業が遅れるのか、さらには納期にどのくらいの遅れが影響するのかまで見える化できます。
2.リスクの見える化
プロジェクトでは、不確実性はリスクとしてマネジメントします。
それぞれの作業がどれだけ遅れるリスクがあるのか、あるいは更に追加される可能性のある作業はないのかをリストアップします。
まず、リスクへの対策を見える化してリストアップし、このリスクの対策をスケジュールに反映させます。
そして、プロジェクトの進捗に合わせて、リスクの見直しを行い、常に最新の状態に保ちます。
3.スケジュールとリスクの共有
見える化されたリスクと、それを反映したスケジュールをC社と共有できていれば、「納期遅延必至」という状況に追い込まれる前に状況把握ができて、必要な対策がとれるようになります。
ここで注意しなければならないのは、リスクをすべてC社の責任にしないことです。
もし、C社がリスクを明らかにしたとしても、里田さんの支援を得ることができず、その対策をすべてC社が引き受けざるを得ないとすれば、C社もリスクをしっかり共有しようとはしなくなるでしょう。
むしろ、うるさく言われないために隠そうとすらしかねません。
里田さんに必要なのは、共有したリスクはC社とともに解決するという姿勢です。
たとえば、要件で不明な点がリスクとしてあがっていれば、里田さんがお客様との要件確定のための協議を行う必要があります。
もし、お客様都合で確定ができないなら、その分の作業を納期後に再設定するなども考えられます。
パートナー企業の進捗をつかむには、
「企業のスケジュールとリスクを見える化し、共有する。そして、ともに対応する」
ぜひお試しください。