今回は、渡辺さん(仮名)からの悩みです。
渡辺さん 42歳/設計部門のグループマネジャー
私は、10月からグループを任され、現在6名の部下がいます。
ところが、ミーティングで意見を言うのは年長のメンバーばかりで、若手のメンバーから意見が出てこないのが気にかかっています。
「ほかに意見はありませんか?」と促してみても何も出てきません。
ときには、名指しで意見を求めるのですが、それでも
「特にありません」「その方針でいいと思います」
といった回答だけで、本当に納得してるのか不安です。
本当に何もないのであれば問題ないのですが、仕事をしている様子や顔色から、なんとなく「なにか言いたいことがあるのに、言えていないのでは?」と感じています。
このままでは、業務効率が上がらないのではと心配しています。
回答
なるほど、何も言ってこないメンバーというのも不安ですよね。
10月から始まったばかりということでしたら、今はプロジェクトのチーム・ビルディングにおけるFormingの段階と思われます。
強いチームを作るプロセスで、代表的なものとしてタックマンモデルというものがあります。それによれば、チームの形成は次の4段階で行われます。
- Forming 形成
- Storming 嵐の状態
- Norming チーム意識の形成
- Performing 目的指向での行動
ここでは、タックマンモデルについての詳細な解説は省略しますが、一つのポイントとして、強いチームを作るには「嵐の状態」が必要だとういうことです。
「嵐の状態」とは、メンバーの意見の衝突が起こり、議論が繰り返される状態です。
強いチームでは、メンバー全員が意見をぶつけ合い、納得するまで議論をする過程が必要なのです。
現状では、意見があっても言えていない状態で、これは「嵐の状態」を避けていることになります。
このままだと、そのメンバーは、納得していないまま作業を続けていく可能性が高く、ご心配のとおり、業務効率が上がらないことが懸念されます。
相手が何も言ってこないとしたら、その原因としては、次の3つが考えられます。
- 言うべきアイデアがない
- 言う機会がない
- 言う自信がない(遠慮している)
「1. 言うべきアイデアがない」が原因であれば事情が違うので、ここでは2, 3のケースを考えてみます。
いただいた文面から、「2. 言う機会がない」については、ミーティングの場を設けて、意見を促してみたり、指名しているのですから、これが主要因ではなさそうです。
いちばん、考えられる原因は「3. 言う自信がない(遠慮している)」です。
そのためには、遠慮する相手(先輩方)がいない場を設定するのが効果的です。
また、人は複数の人がいる場では、なかなか本音を言うことができません。
しかし、メンバーの本音を聞かないことには、あなたは安心できないでしょう。
そこで、あなたは、メンバー個別に1対1でミーティングを行う必要があります。
ただ、ことさらに個人を呼び出してミーティングを行うとなると、相手を緊張させてしまいますし、かといって昔流に「ちょっと飲んで行こうか」というのも、断られる心配があります。
そこで、当社(アイシンク株式会社)の事例を紹介します。
当社では、月に1度マンスリーミーティングの日というのが設けられています。
この日は、誰もが直上および直下の相手と1対1ミーティングを行うことになっています。
メンバーにしても、自分だけ呼び出されるとなると緊張しますが、ミーティングの日で、順番が来たとなれば、特に緊張することなくミーティングを持つことができます。
そこで、もし何事もなければ、5分程度の雑談をして終わることになります。
何か気がかりなことがあれば、「実は・・・・が気にかかっていて」と話が始まり、10分、20分、あるいは1時間にもおよぶ話し合いになるかもしれません。
上司の態度としては、なにか問題がないか問い詰めるようなことをしてはなりません。
また、「何を言っても平気だよ、受け止めるつもりだ」と伝えてください。
そのうえで、率直に「あなたの意見を聞いていないので、自分が不安に感じている」と伝えてください。相手の言葉を引き出すような感じでミーティングを進めてください。
定期的にこのような場(機会)を用意しておけば、メンバーが気がかりな問題を抱えたままでという状態を解消することができます。
「チーム・ビルディングの初期では、定期的に1対1のミーティングの場を持つ」
ぜひお試しください。