最近、外を歩いているとキンモクセイの香りが漂ってきますね。
私はこの香りが好きで、フワッと漂う香りに気づくとよく立ち止まって吸い込んでいます。
そんなとき、「他にもこういう瞬間があったのではないか?」という思いがよぎるのです。
つまり、「本当はもっと一瞬一瞬に感じ取るものがあったはずなのに、それに気づかずにやり過ごしているのではないか?」という疑惑です。
朝起きてから常に、「あれをしなきゃこれをしなきゃ」という頭の中のプランを追いかけ、目的地に向けてできる限りの急ぎ足で歩き、電車の中では大して見る必要もないスマホのニュースをせっせと浴び、デスクに座ればほぼ昨日と同じように自動的に仕事をこなしていく。
そして家に帰ればテレビを見ながら何を口にしているのか意識を向けることもないうちに夕飯を終え、疲れてバッタリ横になってしまう。
そんなふうにしてまた次の朝を迎えている人も多いのではないでしょうか。
目の前の風景や、風に乗ってくる匂い、五感で感じる味わいは断たれ、頭の中だけで人生が回っていっているようなものです。
そして「今、ここ」から離れた意識は、未来や過去の出来事を追いかけまわし、「うまくやらなきゃ」とか「うまくいかない」という焦りや不安を高め、ストレスをどんどん膨らませてしまいます。
そこでここはひとつ、脳内の早送り・巻き戻し生活からちょっと立ち止まり、「今、ここ」に着地する試みをしてみませんか?
そのための良きアシストとして、「呼吸」に目を向ける方法があります。
呼吸は「意識」と「無意識」をつなぐチャンネルです。普段は無意識に行っていることですが、意識して深めることもできます。
例えば、たくさんの仕事に追われて神経がピリピリしている日がありますね。
そんなときは、一つのタスクを片付けたあと、「はい次!」と移る前に、1分間だけ、デスクの前で呼吸に注意を向けてみてください。
とくにコントロールしようとする必要はありません。ただ呼吸のリズムに注意を向けるだけで十分です。
すると「すぅっ」とリズムが変わるのがわかります。
せかせかした呼吸から、落ち着いたリズムが戻ってきて、穏やかで安らいだ気持ちが生まれてきます。
デスクの前だけでなく、エレベーターを待つ間でも、横断歩道で青信号を待つ間でも構いません。1日の中で何度か、呼吸に注意を向け、「今、ここ」に立ち戻る時間を設けてみてください。
せわしない毎日の中でも、穏やかさと落ち着きが戻ってきますよ!