今回から、PMI標準のプログラムマネジメント(PgM)知識体系を掘り下げて、その考え方をトピック的に紹介します。今回はプログラムマネジャーの役割です。
プログラム・マネジャーの役割とはどのようなものでしょうか?
1. プログラム・マネジャーとプロジェクト・マネジャーの大きな違い
プログラムには複数のプロジェクトが存在しますから、プログラム・マネジャーは何人ものプロジェクト・マネジャーを配下に持つ立場となります。プログラムには関連の定常業務も含みますので、その様な業務のマネジャーに相当する立場の人とも連携を取ります。支援部隊としてのPMO(プログラムマネジメント・オフィス)あるいは経営層、顧客などその他の関係者も含めますと、プロジェクトに比べて圧倒的に多くのステークホルダーを対象とした様々な調整を行うことになります。
マネジメント対象期間も長く、プロセスもより複雑、責任はずっと大きいですね。
2. PgMの4つのキーワード
では、役割としての本質的なものは何でしょう。PgMとプロジェクトマネジメント(PjM)との違いからそれがはっきりしてきませんか。
PgMを規定するキーワードは次の4つです。
- プロジェクトに共通の戦略目標の存在
- プロジェクトに共通の成果や統合された成果の存在
- ライフサイクルを考慮した総保有コスト(TCO)でのコスト評価
- プロジェクト横断の相互依存関係調整活動が必要
プロジェクトを個々にマネジメントすることでは得られないベネフィットを実現する考え方、それがPgMでした。
3. プログラム・マネジャーの本質的な役割
上述のこのキーワードから、プログラム・マネジャーの役割が見えてきますね。整理しますと、特に次の3つが本質的なものとして重要です。
- プロジェクトの活動をプログラムの戦略目標と定義されたプログラムのベネフィットに整合させること
- プロジェクトの成果をプログラムの成果として統合すること
- プロジェクトが一貫した方法で組織化され、実行され、あるいは定義された基準を満たす様にマネジメントすること
更にプロジェクト・マネジャーにはない役割として、TCO分析に基づくプログラムの採算評価を行うことが大切なポイントとなります。
プログラム・マネジャーの役割、特にプロジェクト・マネジャーとの本質的な違いといったポイントが理解できましたでしょうか。一言で言うと、「戦略性」がずっと色濃いマネジメント・スタイルです。
- プログラム・マネジャー=Strategic Manager(戦略型)
- プロジェクト・マネジャー=Operational manager(業務遂行型)
と言ったところでしょうか。
次号では、また別のトピックを紹介しましょう。