第4号となる今回は、プロジェクトの成功とプログラムの成功の違いにつき、プログラムマネジメント(PgM)の中の特に重要な考え方であるベネフィット・マネジメントについて解説します。
1. 悲しい物語
みなさん、次の物語をどのように考えますか?
「QCDを十分に満足する製品を開発したが、販売は思わしくなくかった。これは、成功ですか。失敗ですか。」
まずQCDをクリアした新製品ができた、との観点からすれば個別目標に対するQCDマネジメントが焦点のプロジェクトとしては成功、と言えるでしょう。
一方、良い製品が必ずしも売れるとは限らない、と言う現象は良くあることですが、プログラム視点で見た場合には、上述の物語は少なくとも成功とは言えない状況でしょう。つまり、プログラム視点では失敗のケースになります。
2. ベネフィットとバリュー
ベネフィット・マネジメントについて少し補足しますと、実はこの考え方の中ではベネフィット(成果)とバリュー(価値)の2つのことを取り扱います。この2つは意味が異なります。
- ベネフィット=組織にとって有用な活動や行動としての成果。
- バリュー=生成されたそのベネフィットが事業の中で活用され、結果として実現できたもの。
つまり“ベネフィット実現”(Benefit Realization )= “価値”(Value)となります。
例えば上述の物語では、開発された新製品はベネフィット、それを生産・販売し達成できた販売数量がバリューということになります。従って、目標販売数量が未達に終わると、プログラム・ゴールが達成できない結果となってしまいます。
3. 成功物語
PgMでは目標販売数量や目標利益あるいは目標経費削減額などをバリュー目標値として明確に定義し、その達成のためにライフサイクルを考慮したマネジメントをしていきます。バリュー目標値が達成できて初めてプログラムが成功、となります。そして、プログラムの戦略目標に沿った成功物語が成立します。
プログラム成功の基準は、戦略性の観点から見た、その整合の度合いに大きく依存することになります。ベネフィットだけではなくそれに続くバリューの創出がPgMの真髄です。
また、ライフサイクル全体の総保有コストで財務評価することも、成功物語には不可欠であることを忘れてはなりません。
次号では、また別のトピックを紹介しましょう。