実行中のプロジェクトへの中止決断は組織として大変難しいです。第7回目の今回は、プロジェクト中止に関わるプログラム視点での合理性や透明性更にはバリュー創出について、お話しをしたいと思います。
●ビジネス環境の変化の早さ
市場のニーズ動向が以前にも増して早く変化していく昨今にあって、どの分野でも製品開発においては、”スピード”が当たり前のキーワードです。例えば、新機能や高性能搭載の製品開発を目論んでスタートしたプロジェクトが、その後の市場ニーズ変化や競合他社動向に伴い、見直しや場合により中止に追い込まれるケースがあります。
その際、組織としての方針変更決断の判断ポイントが明確でない場合や決断時期が遅れたりする場合には、事業としてダメージを受けるばかりでなく推進責任者のメンツや担当メンバーの士気と言ったメンタル面にも影響が出る可能性もあるでしょう。
●合理性・透明性のある中止決断
特にプロジェクト中止の意思決定は極めて難しいですが、例えば「燃料電池使用の製品開発プロジェクト」が中止になったとします。この場合、上位のマネジメント定義として「エコ対応製品シリーズによる市場拡大プログラム」というものがあってその中の一つとしてプロジェクト定義されていれば、これまでご紹介してきたプログラムマネジメント(PgM)思考で中止の合理性、透明性が説明できます。ステークホルダーからの客観的な納得が得られることにもなるのではないでしょうか。なぜなら「戦略性」と照らし合わせ、継続・見直し・中止判断の明確な尺度を定義しておくのがPgMでした。「戦略性」指向の弱い従来のプロジェクトマネジメント(PjM)領域のレベルでは対応できなかった点です。
●中止決断が組織へ貢献
おさらいとなりますがPgMでは、常に戦略目標の視点からその構成要素である個々のプロジェクトを位置づけていますので、「戦略目標との整合性維持」や「戦略目標達成」のためにはプロジェクト中止選択もやむを得ない訳です。むしろ、その選択がプログラムとしての全体最適化に繋がることになりますから、組織への貢献度が高まることになります。戦略目標の視点からは、中止するプロジェクトに代わって新たなプロジェクトを立ち上げ、そこへ資源を再配分する対応を取ることもあります。
●バリュー創出の維持
つまり、PgMではプログラム視点に照らし合わせ場合によってはプロジェクト中止を選択することで戦略目標を維持・達成する意思決定をすることになります。そして、ねらいとして定めた当初のバリューを確実に創出します。そのため、プログラム・ガバナンスやベネフィット・マネジメントが特に大変重要な役割を担うことになります。「戦略目標維持・達成」その結果としての「バリュー創出」これが、PgMねらいの原点です。
次号では、また別のトピックをご紹介しましょう。