皆さんは「感情労働(emotional labor)」という言葉を聞いたことはありますか?
聞いたことはなくても、実は皆さんも「感情労働」していることは間違いないでしょう。
これは「肉体労働」「頭脳労働」に続く第3の労働形態として注目されている概念です。
元々は看護師や対人援助職、フライトアテンダントなど顧客サービスに従事する人たちに求められる職務要素として見出された概念です。
看護師の仕事をこなす上では、患者さんに「思いやり、優しさ、共感」などの感情を表すことが当然のように求められます。
もし私たちが病院にお世話になったとき、看護師さんから冷たくて、機械的な対応をされたとしたら、強い不満を覚えるでしょう。
このように私たちは、そのサービス従事者に対して、その行為だけでなく、「適切な感情を示されること」を期待しています。
ところがこれは何も「お客様サービス」に限った話ではありません。
上司・部下・同僚に対する「社内サービス」としても大いに求められていますよね。
- 部下がよく考えもせずに企画書を出してきたときも、穏やかな態度を崩さず指導する
- 上司から屈辱的なことを言われたとしても、怒りを示すことなく、笑顔でやり過ごす
- 強制参加でちっとも面白くない宴会の席も、楽しんでいるふりをする
などなど、職場では「自分の感情をその場にふさわしい形に調整すること」が暗黙の了解として求められています。
そしてそのルールから逸脱すると、「パワハラ上司」とか「生意気なやつ」とか「空気が読めない」といった評価を受け、さまざまな不都合を生むことになります。
この「感情労働」、お互い気持ちよく働く上では、ある程度は必要な努力だと思います。
ただ、この「感情労働」をしていることに無自覚だと、気づけば「過剰労働」に陥ってしまい、自分の感情をすり減らしてしまうことにもなります。
仕事に就いた当初はやる気があり、温かみと情熱を持っていたはずの人が、気づけば「無感動で、無表情で、機械的」な様子に変わってしまうということが起こりかねません。
ですので、「今日はいっぱい働いたな~」と1日の労働をねぎらうとき、「今日はいっぱい感情のコントロールをしたな~」という点も、どうぞねぎらってあげてください。
そして「働きすぎ」のときは、「ちょっとお休み」もしてあげてくださいね!